前回の続きです。
通訳案内士の筆記試験とセンター試験の免除制度で、口述試験に進めることになりました。
この試験は、通訳案内士として試験委員2名と10分程度のやり取りを行います。2つのパートに分かれていて、1つは委員が読み上げる日本語を外国語訳する試験、もう1つは提示される3つのテーマから受験者が1つを選んで外国語でプレゼンテーションする試験になります。外国語による質疑応答もあります。合格率はざっくり50%前後で、筆記試験よりは高いといえます。
私には外国人の同僚がいて、職場で英語を使いますが、はっきりいって会話は苦手です(日本語でも苦手かもしれません…)。また英訳やプレゼンは、教科書を暗記すれば終わりという試験ではないため、どう準備するか悩みました。
・試験の準備
とりあえずプレゼンの参考として、以下の2冊を購入しました。『日本のことを1分間英語で話してみる』は、使っている英文が平易なのと、プレゼンの短い時間に収まる内容なので、役に立ちます。またハロー通訳アカデミーの教材でもある『日本的事象英文説明300選』は、少し古いですが、多くの例文を含んでいるため、予期しない内容が出題されても、何らかの話題を提供する一助になると思います。
上記に加えて、ハローさんのホームページにある資料を使いながら、予想されるキーワードからプレゼンを考える練習しました。オンライン英会話を使って実際にプレゼンしてみるというのも有効だと思います。私は英会話の授業を受ける時間もないまま、12月の口述試験を迎えてしまいました。
・会場の様子
実は口述試験の直前に、別の英語の試験に落ちてしまい、面接に対する大きな不安を抱えて、プレゼンを実施するという最悪の状況でした。もう行くのも嫌だったのですが、センター試験まで受けて、キャンセルすることは出来ないと思い、とにかく会場に向かいました。
会場となる大学に到着し、エレベーターで待合室へ行きました。エレベーターの中で一緒になった年配のおじさんが「It is fine day, isn’t itですなぁ」と話し掛けてきて、心が折れました。。。せっかく話し掛けてもらったのに、最悪の状況だった私は「Yes, it isです」と返すのが精一杯でした。普段ならもうちょっと頑張るのですが。おじさん、すみません。
待合室の雰囲気は、英検準1級の面接試験より年齢層が高くて、私の目には外国語がペラペラの方ばかりに映りました。通訳案内士として振る舞うという要素もあるため、スーツとかしっかりした服装の方が多かったです。優秀そうな人ばかりで気後れしながら、自分が呼ばれるのを待ちました。
面接室の中では、いかにも英語が得意そうな日本人女史と、とても優しそうな外国人おばあさんが座ってました。簡単に挨拶すると、優しそうなおばあさんが「あなたのネクタイはとてもすてきね」とすごく褒めてくれました。自分のネクタイは時代遅れのデザインでしたが、タイシルクの逸品だったので、このおばあさんはすごい目利きではないかと思わされました(単なるお世辞だったのかも…)。日本人女史の方は何の反応もなく、淡々とした感じで試験が始まりました。
<通訳問題>
「日本には、北海道を除き春と夏の間に梅雨と呼ばれる雨季があります。日本は南北に細長いので、梅雨は沖縄と東北では約1か月ずれます。梅雨が終わると本格的な夏が来て、気温が上がります。梅雨は日本の農業、特に稲作にとって重要です。」
上記の日本語が読まれ、これをすぐに英訳します。メモは取れるのですが、速記しないと間に合いませんので、問題のキーワードを残す程度に書きました。この辺は、通訳の技法にもなるようです。得意な天気の話題だったのと、梅雨に関する例文が『300選』に出ていたことは、ラッキーでした。それなりに英訳してから「日本の梅雨はいつですか」といった質問に答えました。
<プレゼン問題>
(1)たこ焼き
(2)伏見稲荷
(3)待機児童問題
上記から1つを選ぶのですが、あなたならどれを選びますか?たこ焼き以外は表現が難しそうだったので、私は迷いませんでした。こちらもラッキーなことに、たこ焼きに関する例文が『1分間』『300選』共に出ていたのと、家でもたこ焼きを作る機会が多いので、何とかプレゼンできたと思います。おばあさんの方から「どこで買えるの」「場所によって味が違うの」「お勧めのお店は」といった数多くの質問がありました。おばあさんはまだ質問したそうでしたが、時間も超過していたので、女史の方から制止されてました。
・試験を振り返ると
口述試験が終わったら気分は晴れやかになりました。しかし会話は盛り上がったものの、文法の間違いも多かったし、この英語力では落ちたなと思ってました。そのため全く期待していなかったのですが、結果は合格でした。問題と試験委員に恵まれたのだと思います。通訳案内士の試験は、筆記で問われる範囲が広く、口述は運もあるため、合格することが出来、とても嬉しかったです。
その後は、必要な書類や写真をそろえて都道府県に登録しました。医師の診断書は、いつもお世話になっている近くの内科にお願いしました。もしガイドの仕事を探すなら、通訳案内士の組合や協会による新人研修を受けて、次のステップに進めます。私には難しい選択肢なので、違う道を模索して有効に活用できないか考えています。
ということで、運にも左右される試験だと感じました。受かった方は、登録機関による研修が始まっていますので、そちらの受講もどうぞお忘れなく!